ぶらり、大山 〜大山の不思議と素敵を語る〜 大山開山1300年祭 特別コラム

[第33回]国引き神話の中の大山(火神岳)と三瓶山(佐比売山)

出雲神話と云えば『古事記』と『日本書紀』、そして『出雲国風土記』に描かれた古代出雲が舞台の神話です。神話とは、一般的には世界の始まりを語った神聖な物語だと考えられ、ギリシャ語のミュトスという言葉を翻訳したものということ。もともと「語られるもの」という意味で、本来は口伝で古老や祭祀を執行する司祭者によって語り続けられてきました。日本では、約1300年前、朝廷の正当性や、支配地域の歴史、地理、文化などが整理され、記紀、風土記の中でそれまで語り続けられてきた物語(神話など)が文字に起こされました。出雲神話は “国造り神話”“ “国譲り神話”、そして “国引き神話” がその代表的なものとされています。今回は出雲国風土記に描かれた物語 “国引き神話” に注目してみました。


※国引き神話の概要はこちらの松江市の観光サイトを参考にしてください。
https://www.kankou-matsue.jp/about_matsue/rekishi/densetsu/page2.html

 

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(写真1:大山と三瓶山(コラージュ))

国引き神話の杭になった二つの山を並べてみましたが、山容が大変似ていることに気がついます。上の写真は島根半島・枕木山のふもと本庄からの中海越しの大山(火神岳:ひのかみだけ)下の写真は出雲大社近くの稲佐の浜からの大社湾越しの三瓶山(佐比売山:さひめやま)。大山は弥山(1709m)と三鈷峰(1516m)、三瓶山は男三瓶山(1126m)、女三瓶山(957m)が同じように配置され、相似形であることに驚きます。島根半島中央部の山上にある古刹・一畑薬師の麓にある出雲市立東小学校や旭丘中学校の校歌では出雲富士(大山)と三瓶(佐比売山)が見えると唄われていますが、このあたりからは、確かに左右に同じような形をした山塊が見えます。出雲国風土記の著者は、この風景から国引き神話のヒントを得たのではないかと想像が膨らみます。

 

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(写真2:島根半島・宍道湖ジオパーク ポスター)

この写真は「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」を鳥瞰した絵図(ポスターを写真で撮ったもの)ですが、島根半島の山塊を引っ張った綱・弓ヶ浜半島(境港~日野川河口)と薗の長浜(稲佐の浜~湖陵町の差海川河口)が同じように弓型を描き、シンメトリックになっていることに驚きます。この杭(大山と三瓶山)と綱(弓浜と長浜)を使って、八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと※長浜神社御祭神)が海の向こう(新羅、隠岐、能登)から4つの大地(山塊)を引っ張ってきて古代出雲の国土を広げたというのが『国引き神話』の核心部分です。でもどうして、朝鮮半島の新羅、隠岐、能登半島なのか・・・。諸説ありますが、背景には古代出雲と交流(交易)が行なわれていたことがあったことは間違いなさそうです。(絵図では三瓶山は描かれていませんが、実際は絵図右端に隣接しています。)
絵図のエリアが古代出雲の中心的な地域だった訳ですが、この絵図から当地の様々な事象を想像することができそうです。例えば、たたらの歴史文化、それによってできた出雲の広大な平野や弓ヶ浜半島などの砂丘地域、地溝帯のような宍道湖、中海(島根半島と中国山地に挟まれた低地帯)、そこを吹き抜ける風、大社湾や美保湾の海流、それらを導いた島根半島の存在、日が出る山・大山の存在、日の沈み地・日御碕の立地、はたまた出雲大社の立地、枕木山華蔵寺や一畑薬師の立地、さらには米子や松江などの都市の立地などにも思いを馳せてみると、歴史(人々の営み)を軸に地域のカタチがクッキリ浮かびあがってくるようにも思います。

 

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(写真3:縄文海進時代のイメージ地形)

この図は縄文海進(約6000年前)時代の想定される地形(海水面が7m上げた場合の地形図)です。かつて、島根半島が日本海に浮かぶ島で巨大な防波堤の役割をしたこと、中海・宍道湖はその島に守られた入海で、天然の良港もエリア各所にあっただろうことが解ります。大陸や日本海側の各地と交易も盛んに行われていたことも想像できますね。その際には三瓶山が西の入り口のランドマーク(目印)になり、大山が東の入り口のランドマークであったことでしょう。さらに、大山は標高が高い独立峰ということ、また、中海・宍道湖圏域からは日が出る山であることから、古代出雲のシンボル(神山)として崇められたのだと思います。出雲国風土記では「火神岳」と表現されていますが、この火は“日(太陽)”と読み替えたほうがいいかもしれません。“日神岳”すなわち太陽神の山と。


地形(古代~現代)から地域のカタチ(歴史文化)を読み解いたり、国引き神話の秘められたメッセージを読み解いたり・・・、そんなブラタモリ視点で地域探訪をすると、さらに驚くような発見があるかもしれません。トライしてみませんか!?      

 

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(写真4:火神岳(日神岳))
 

                                    (BUNAX)


 

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