ぶらり、大山 〜大山の不思議と素敵を語る〜
[第6回]夏山登山道を歩く
お盆を過ぎると、木々の間を吹き抜ける風に秋の気配が感じられるようになる。登山口で迎えてくれるのは、シシウドやヒカゲノミツバの白花。足元に目を移すと、ノブキの花も咲いている。樹木を見上げると、クマシデの実が蓑虫のようにぶら下がっている。木の枝には首元のオレンジ色の羽毛が目立つキビタキの姿も。ミンミンゼミの賑やかな合唱の中に、エゾゼミの「ギーギー」という音が混じる。赤く見えるミズヒキの花は、下から見上げると白い。命名者はよく植物を観察しているものだと感心する。ピンク色のツリフネソウの花、紫色のソバナの花、黄色のキンミズヒキの花なども見られる。
登山道の出迎え
六合目を過ぎるとブナなどの高木は無くなり、ヤマヤナギやカエデ類などの低木になる。七合目あたりからダイセンオトギリの黄花が見られるようになる。平地で見られるオトギリソウに比べ花が大きく、径が3センチくらいになる。「大山弟切」という名のとおり、兄が弟を刀で切ったという伝説から名付けられていて、弟の血しぶきが葉に黒い点として残っている。
八合目を過ぎ山頂にかけてのダイセンキャラボク周辺や草原には、色とりどりの花が咲き乱れている。青紫色の小さな花を茎先につけるナンゴククガイソウ、白いブラシのような花穂のサラシナショウマ、ピンク色の小さな花をたくさんつけるシモツケソウ、ゲンノショウコに似たピンク色の花で花径が3センチほどあるイヨフウロ。
50~100センチの花茎に淡紫色の花を多数つけるオオバギボウシ。エゾノヨロイグサはシシウドに似た白花を付け、茎丈が1.5メートルほどもあるのでよく目立つ。
夏から秋に季節が移る頃には、エーデルワイスに似た白い花のホソバノヤマハハコやアキノキリンソウの黄花が目立つようになる。
このように、夏山登山道は3kmに満たない距離でありながら、標高差約900mの動植物の変化が見られると共に、四季折々の自然の移ろいを体感することができる。
ヒメボタル